書棚にある

―― 佐藤愛子 著『晩鐘』

2018 年6月、私はこの本の筆写を終えた

表紙を開けた見返しの部分に、

―― 佐藤愛子先生のサイン

をいただいた

 私は作家・佐藤愛子が大御所を務める同人誌へ入会をした。その名を随筆春秋という。私がどうしても文章が上手くなりたいと申し出ると、大御所の作品の筆写を勧められた。筆写とは作家の文章を一言一句違(たが)えずに書き写すことである。私は、代表作『晩鐘』筆写を終え、現在は上中下巻からなる、もうひとつの代表作『血脈』の、中巻の筆写を間もなく終えるところである。

 そんな血のにじむような努力をしているのならとおっしゃり、ちょうど『晩鐘』筆写を終える節目に、特別にいただいたのが、このサインなのである。

 現在、佐藤愛子先生は95歳の高齢であり、精力的に執筆はされているものの、筆をとって本や色紙に揮毫(きごう)されることはほとんどない。手に上手く力が入らないのだ。

 令和時代の作家・佐藤愛子のサインはとても貴重なのである。

2019.08.25

小倉一純