極寒の犬走り

 4月も半ばである。たが、今朝の犬走りは極寒だった。昨夜は雨が降り、家々の車もびしょ濡れである。屋根つきでも、ボディーには沢山の雨つぶが乗り、強風に踊っている。それは、花冷えなどという表現をとうに超えている。気温にしてせいぜい2~3度だろうか。まるで竜飛岬にでも立っているかのような気分がする。竜飛岬といえば津軽半島の最北端だ。「酒はぬるめの燗がいい♪ 肴はあぶったイカでいい~」、今朝はこの多摩丘陵の住宅街にも、こんな八代亜紀の唄が聞えてきそうである。

 我家は西側が、住宅街の道路に面している。家屋はその道路際まで迫り、そこには犬一匹が通れるほどの小さな道がある。これが「犬走り」である。滞った血を回転させるために、私はそこを毎朝歩く。犬走りを含む敷地内の同じところを、グルグルと回っているのである。それでも私にとっては、室内のエアロバイクなどより遥かに具合がいい。毎日違う、空の色を眺めることもできるし、ご近所の人の気配を感じることもできる。

 ぶ厚いダウンジャケットに軍手をして、早足で都合3キロは歩いただろうか。結局今朝は、ひと汗くるところまでいかなかった。逆にどんどん身体が冷えていくのである。

 竜飛岬に暮らす人々も、朝のウォーキングなどするのだろうか。ふとそんなことを思う、極寒の犬走りであった。  了


2019/04/11

小倉一純

近藤健 先生  
 先年、随筆春秋の近藤健先生は、30年近い東京生活を仕舞われ、故郷の町のある北海道へ戻られた。大手石油販売会社の本社を離れて、現在はその札幌支店に勤務されている。ご家庭の事情で転勤願いを出していたのだ。近藤健先生は、会社員と文筆家の二足の草鞋を履いた、日本一のサラリーマン作家である。
 一昨年縁あって、随筆春秋の同人となることを許された私は、10編近い作品を、札幌の近藤先生に添削していただいた。「よく書けています!」と寸評があるものの、原稿をめくるとそこかしこに朱が入っている。努力して勉強していくうちに、赤ペンの個所はだんだん少なくなっていき、私にとってそれが何よりの励みとなった。
 先日、近藤健先生よりこのホームページへコメントをいただいた。――機が熟し、花開く日を楽しみに待っております(その一部を抜粋)……と記されていたのである。感動!
 その近藤先生が師と仰ぐのが、随筆春秋の大御所でもある、作家の佐藤愛子先生である。
◆近藤健先生 作品集「Coffee Break 別邸」https://ameblo.jp/j7917400/
小倉一純



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