神の救いが必要な男

 母が昨日、聖イグナチオ医科大学病院を退院した。といってもわずか1泊2日の入院だったが。とりあえず右の眼に、単焦点のレンズを入れてもらったのである。保険の効く白内障の手術だ。数週間後、もう片方も同じこの病院でやってもらうことになっている。

 聖イグナチオというぐらいだからキリスト教系である。受付にはいつも年配のシスターがこちらを向いて座っている。その受付を目指して歩いていると、横にあるスターバックスに、かつてのスター歌手・朱里エイコを思わせるような女性の姿があった。立派な脚をふとももまで出したミニスカートである。後光(ごこう)の射すような光景に私の目は釘付けになった。ややあって正面を向いたとき、このシスターと目が合ってしまった。

「ミニスカートの女性をじッと見つめてしまいました」

 私がとっさに懺悔(ざんげ)のようなことを口走ると、

「殿方が若い女性に関心をもつのは、悪いことではありませんよ」

 とシスターの言葉が返ってきたのである。

 私はとても清らかで安らかな気持ちになることができた。こういうのを救われる思いというのだろう。

 ―― 私は、神の救いが必要な男である。


2019.08.17

小倉一純


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