2022.09.29 06:45ずっと小説家になろうと思ってきた(新掲載)「ずっと小説家になろうと思ってきた」高校のころつき合っていた彼女に――僕が札幌に行ってパチンコ屋の釘師になったらどうする?――と何度も尋ねたことがあった。 世間知らずの高校生が考えることだから、ろくなことではない。とにかく人生の裏街道を歩くことで辛酸を舐め、それを原稿用...
2022.03.31 12:47兵どもが夢の跡(随想)「兵どもが夢の跡」(随想)もう35年も前の話だが、僕が社会人となったころには、日本金属工業、日本ステンレス、日本冶金工業という3社があった。これらは、電気炉でスクラップを溶かしステンレス鋼を製造する会社だ。売上はそれぞれ1千億円程度だった。いまどきの巨大企業からみれば大した額では...
2021.08.26 03:54会社消滅「会社消滅」本日、3月31日をもって、僕が社会人となって最初に勤務した会社がこの世から姿を消します。わずか5年の在籍でしたが、僕が初めて社会の風を受けたのが、この会社でした。 図らずも経理課―ビジョンのない僕には特に希望などなかったのですが―に配属となり、僕はとてもショ...
2021.07.15 17:24純文学の日はまた昇る 純文学が華やかなりし頃、その作家と呼ばれる人たちはいわゆるインテリでした。物事のプリンシプル、つまり原理原則を分かった人たちです。夏目漱石や森鴎外、もう少し新しいところでは川端康成など、優秀な学校歴、学歴を持った作家たちも多くいます。一方、民衆にはまだまだ無学な人も多くいました。...
2021.05.01 07:27萌えの向こう側(工場その3)「萌えの向こう側」(工場その3)工場萌えの女子たちは、ただ単に工場群の夜景がきれいだから、惹(ひ)かれているのではないと思う。工場にある建物はふつう「建屋(たてや)」と呼ばれている。その建屋の屋根や外壁などはスレートの波板でできている。石膏ボードに近い感じの素材だ。それに経年の汚...